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和泉 WAN,WAN,コミュニティー

和泉 WAN,WAN,コミュニティー

ある人の体験談

 あ る 人 の 体 験 談


私が動物愛護を語るには、本当は一番最初に記さなければならない犬がいる。

私にとって、あまりに酷い過去の記憶。封印しようとしても封印できない。

思い出すたびに辛く、助ける事が出来なかった自分の無力をずーっと思い知らされ続けてきた。

助けることが出来なかったんじゃない、

積極的に助けようとしなかった自分への罪悪感、若いころから引きずっている。

ただ祈ることしか出来なかった後悔の念。

隣人が犬を連れて引っ越してきたその日から、犬と共に私の苦しみが始まった。

その犬は来た時からやせ細っていた。夜になると切なそうに遠吠えをする。

私の母が「どうしましたか?」と聞いてくれた。

「こいつ、すし屋から貰ってきたんだけど、

寿司ネタで贅沢に育ったから、メシ食わねえんだよ」

もらってる餌は白飯に梅干、それが水浸しになっている。

毎夜の遠吠えは次第に苦しそうな響きに変わっていく。

繋がれっぱなしで一度も散歩に行くのを見たこともない。

いつか隣が留守のときにちゃんとご飯をあげよう。

いつか、いつか、いつか・・・・・隣は男ばかり数人の家族・・・ちょっと恐い

私にとっては係わりたくない雰囲気の家族

どうしていつも誰かが家にいるの。隣家は昼も夜も留守になることはなかった。

日に日に絶望的な悲痛な叫びへと変わっていく。

とうとう私は夜こっそりと、ご飯を上げた。こっそりのつもりだったけど、犬は大喜びでガツガツ。

大騒ぎをしてしまい「何やってんだ!」と見つかってしまった。私は隠れ損ねて気まずい雰囲気。

「どうもすみません」「いえ、ここちらこそ・・・・」ちゃんとご飯を食べられたのは、この時だけ。

「なんで、メシ食わねえんだよ!」キャンキャンキャン

腹を立てた隣人は犬を殴るようになった。

もうすでに遠吠えにも元気がなく苦しそうに唸る日々。

そして、時々「キャンキャンキャ~ン キャンキャンキャン」と響き渡る悲鳴。

また殴ってる!「ギャン ギャギャ~ン」「クゥクゥ~~」

私の心は地獄「神様、どうかお助けください」

毎日、手を合わせて祈っていたけど、、、どうすればいいんだろう、どうすれ

ばいいんだろう

どこにも相談するところ、訴えるところがなかった。

ひたすら「神様、お願いします、助けてあげてください」

そして私は、もし留守のときがあったら鎖を外そうと決心していた。

犬は飼い主を選べない、自分で自分の人生を切り開く事が出来ない。

与えられたものの中でしか生きていけない。

すべては、どんな飼い主に巡り合うかで決まってしまう。

いくら不幸な人間がいたとしても、人には自分で努力して

人生を切り開き、変えていくことが出来るけど、、、、、。

鎖で繋がれた犬にとっては、与えられたそれがすべて。半径1mにもならない地面がすべて。

鎖をはずしてあげたら遠くへお行きなさい。逃げるんだよ。

こんな飼い主のもとにいるより、野良の方がまだましよ。

きっと外しに行ってあげるからね。

「神様、どうか、私にチャンスをお与えください」

でも私の願いは虚しく、チャンスは訪れない。

ある日、その子を見たら、

その子にとって生きていることが地獄であることが分かった。

「神様、お願いします。もう十分に苦しみました。

どうか安らかに休めるところに連れて行ってあげてください。

お願いします、もう苦しみから解放してあげてください。

天国へお連れ下さい、お願いします」泣きながら祈った。

まさにその翌朝、その子にダンボールが被せてあって、死んだことが分かった。

「神様、ありがとうございます。感謝します。」

感謝しながら、私は罪の意識をも感じていた。私はその子のために祈ったんじゃない。

自分が苦しみから逃れたいから祈ってたんじゃないか。

本当はどんなことをしてでも、体を張って助けるべきだったんだ。

それをせずに、「犬のために」なんて言葉虚しいだけ。

骨に皮が貼りついてるだけの姿になってようやく苦しむことから逃れられた。

越してきてから1ヵ月か2ヶ月か、その間、何も食べずに苦しみぬいて死んで行った。

私の若かりし頃の出来事。思い出すたびに、未だに苦しい。
・・・・・・・・・


 ある人の過去の体験談を許可を戴き転載しました。


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